海事代理士試験
合格後について

このページでは,海事代理士国家試験に合格した後のことにつきお話致します。

海事代理士として仕事をしていく上で,まず地方運輸局への登録,その後に海事代理士会への入会(任意)という流れとなります。

海事代理士法の確認も怠らずに。

◆ このページの目次
  1. 海事代理士名簿への登録
  2. (社)日本海事代理士会のご案内
  3. (社)日本海事代理士会への入会
  4. 海事代理士法(抜粋)の確認
  5. 海事代理士登録後
    1. 個人事業開廃業届等
    2. 報酬の源泉徴収義務
    3. 海事代理士の領収書
    4. 銀行口座の開設
    5. お客さんを獲得するには
  6. 海事代理士を廃業するには

海事代理士名簿への登録について

海事代理士になるには,地方運輸局への登録が必要です。
海事代理士としての第一歩がここにあるわけです。

・該当法令規定

海事代理士法第9条第1項
同法施行規則第1条第1項




◆登録を受けようとする事務所の所在地を管轄する地方運輸局等へ以下の書類を申請してください。

※登録申請書に,海事代理士の職印を押印します。海事代理士業の実印のようなものですね。
他士業とは異なり,「海事代理士」が印影に入っていなくても登録は可能で,個人の実印でも構いません。
ただ,官公署に提出する文書並びにお客さんに発行する請求書や領収書等の文書に個人の印影ってちょっと・・・って気も個人的にはします。

「海事代理士高松大乃印」
「海事代理士高松大印」

といった形で作成することが好ましいでしょう。丸印・角印の制限もありません。私の場合は,海事代理士は象牙の丸印,行政書士は木の各印を使っています。

大きさも24mm程度までであれば申請書の枠ははみ出ますが登録可能です。
私も当初は24mm角を使っていました。が,すげー邪魔です。デカくて。
各々で押印する書類をはみ出まくるわ,バッグの中で場所取るわで,途中からうっとうしくなりました。


登記されていないことの証明書とは
「成年後見登記制度における登記されていないことの証明書」は,法務局で受領します。尚,こちらは郵送での交付申請ができます。詳しくは最寄りの法務局へお問い合わせ下さい。

※尚,こういった書類の収集能力は実務家には必須です。この機会にしっかりと覚えてください。



以下,海事代理士登録申請先です。

◆相談窓口:海事局総務課調整係
03-5253-8111(内線43144)及び上記各地方運輸局等窓口



 海事代理士登録後は,コチラのメーリングリストにもご参加お願い致します。

全国海事代理士MLL



日本海事代理士会のご案内

  1. 目的(定款第3条より要約)
    1. 支部会員相互の緊密な結合による海事代理士会の品位保持
    2. 海事代理士業務の改善・進歩
    3. 日本海事代理士会本部との連絡調整による相互の親睦増進

  2. 事業内容(定款第4条より要約)
    1. 支部会員の品位保持のための研鑽事業
    2. 業務に関する研修・指導・連絡事業
    3. 支部会員及びその補助者間の交流親睦事業
    4. 広報活動の事業
    5. 福利厚生事業
    6. その他必要事業

  3. 入会のメリット
    1. 各種研修会への参加,研修会の優遇など
    2. 人脈・ネットワークの拡大
    3. 情報交換や取得など
    4. 会員章(バッジ)・会員証・倫理要綱状の貸与
    5. 事務処理規定等の実務書の入手
    6. 信用力の拡大
    7. 最新情報の案内,海事の窓の発行
    8. 会員専用ホームページの閲覧
    9. 専門部会への参加
    10. MARITIME ACCESSへの参加
    11. 海事代理士業界への振興
入会のメリット
各種研修会への参加,研修会の優遇など
 海事代理士会では,年に数回程度,支部単位で研修会を行っております。
また,年に一度「中央研修会」という名前の3日かけて行う大きな研修会があります。
これらの参加費用が会員と非会員とで倍近く違います。
人脈・ネットワークの拡大・情報交換や取得など
この業界での人脈確保という点でのメリットが非常に大きいと言えます。「絶対」に必要と言っても過言ではありません。
人脈というものは,士業を展開していく上で非常に重要なことです。

私自信,非常に忙しいときに急ぎの事件の依頼があった場合などは協力をしてもらうことも多々ありますし,逆もまた然りです。相互に業務に関する情報交換をしたりなど,今後,事務所を経営していく上で大きなことであると個人的には思います。まず第一に,良い先輩とめぐり合えるかどうかで,今後の自身につき,大きく変わるだろうことは間違いないと確信しています。
私も開業当時は複雑な事件に対応することができず,先輩海事代理士の先生に頼る場面も多々ありました。もちろん,今でも自己の不得手な業務で,急ぎの処理を望む依頼が来た場合など,その分野について数多くの実績のある先生に複委任という形で業務処理を委託する場合や,事務所に来訪してわからないことを聞いたりなどもします。もちろん,今でもそうです。
私自信,後輩海事代理士先生に業務について質問される機会も増えました。
そうやって成長していっては,今度はお互いに知らない分野の業務に精通していく,海事代理士として成長していく,お互いに助け合える,これってとても面白いことでもありますし,素晴らしいことだと思います。

また,同業で他資格(司法書士・行政書士)と兼業の方もいます。こういった方々との関係も非常に大切です。開業始めで,これらの資格者のツテがない場合,知らない人に突然仕事を頼むことになってしまうと思います。その場合に,海事代理士会の会員である兼業者との人脈があれば,仕事もしやすい場面もあると思います。
例えば,法人の許認可を取ってあげる際,会社であれば目的の変更(商業登記)をしなければなりません。その際,「ご自分で司法書士に依頼してください」では,ちょっと不親切かも知れませんね。また,許認可を取ってあげたお客さんがその他の営業許可を欲しがるケースも多々あります。そういった場合はやはり行政書士・社労士との連携も必要ですし,他士業の協力が必要なケースを言い出すとキリがありません。毎回とは言いませんが,少なからず,人脈があるに越したことはないと思います。
また,同じ支部の会員に他士業の方がいらっしゃらなくても,皆さんは提携先を持っているでしょうから,紹介してもらうということもできるでしょう。
会員章(バッジ),会員証・倫理要綱状の貸与
1.海事代理士会のバッチはデザインが格好いいということで,非常に人気が高く同業士業(行政書士・社労士など)の先生方からも支持されています。
バッチを付けるメリットとしては,資格者であることを客観的にアピールできることが一番に挙げられます。バッチはいうなれば,法律家としての証明といっても過言ではないでしょう。
私も普段は付けていませんが,仕事の時,特にクライアントとの打ち合わせに望む際には必ず付けています。
また,役所での申請などをする際にも,「はじめてですか?」とか「あなたが海事代理士である証明はありますか?」と,結構恥ずかしくなるようなことも言われない(かも)です。


2.会員証は,身分証明書です。役所での申請の際(特に運輸局の海技資格課・法務局での登記申請)に資格者としての身分証の提示を求められます(求めないところもあるかもしれませんが)。また,職務上請求等で身分証を求められるます。そういった場合に海事代理士としての身分証明に使えます。常に携帯しているとよいでしょう。


3.倫理要綱状は,事務所に掲示することにより,資格者として,また,法律家としての威厳をアピールできるものと思います。また,品位・資質についても記載されているため,自分の心の引き締めにもなるでしょう。
事務処理規定等の実務書の入手
非売品資料です。研修会資料であったり,代理士会で作った業務資料であったりなど。

ハッキリ言って私の知りうる限り,代理士会でなければこのような有益な業務資料は作りえないですし,会員でなければ入手し得ないものと考えられます。

登記資料・海上運送法関係などはぜひ手に入れたいもの。 
信用力の拡大 
★お役所絡み
まだまだ業界全体に浸透しているとは言い堅いので,どこへ行ってもというわけではないのですが,,私の知りうる限り,関東運輸局の海技資格課や東京法務局では代理士会の会員であるかを問われ,又は会員証の提示を求められたということを耳にします。
私自身,船舶登記申請の際に会員証の提示を求められたことがあります。

そういった面からも,やはり非会員の先生は肩身の狭い想いをした経験があるそうです。

役所的に見ても,代理士会の会員でなければ身分の担保,つまりそのものが真に海事代理士であることを判断することが難しいことや,能力が担保されているかという点も気になるところではないでしょうか。また,私の耳にする限りでは,どこの官公署とは言いませんが,非会員の一見さんはかなり面倒臭がられる傾向があるようです。


★同業者絡み
例えば登記関係の証書の受領や,許認可の申請,船舶検査の申請などで,どうしても地方の先生に頼らざるを得ないケースがあります。
代理士会の会員であれば,Web上ですぐに所在を確認できますが,非会員であればそうもいきません。
ご存知の通り,「紹介」は非常に重たいもの。するにしてもされるにしてもです。
我々のような実務法律家は非常に大きな「専門家責任」が生じます。ビビらせるわけではありませんが,業務によっては信じられない額の損害賠償を請求される危険性を孕んでいるわけです。一見の,身分が定かではない人に仕事を任せられて受託できますか?私は正直怖いです。また,頼む時に同じことを考えられてしまう可能性もあるわけです。

前述した他士業の先生のへの協力を求めるのにも少なからず同じことが言えると思います。
最新情報の案内,海事の窓の発行
定期に最新情報のFAXや,配布物等が郵送で送られてきます。最新情報に近時の法改正や,海事業界の動向などが記されていて,我々にとって大変有益な情報となります。

また,不定期で発行される「海事の窓」という冊子ですが,これはもう大変役立つ情報満載です。

過去のものも是非,会員となり,同じ支部の仲間に見せてもらってください。
会員専用Webページの閲覧
これがもう,大変役に立つものばかりです。
あまり内容を公にするわけにはいきませんが,大まかなものだけ。

法令データ集や運輸局一覧データ,海事関係の官報や業務資料があります。
特に業務資料はこれはもう大変価値のある貴重な情報であることは間違いありません。

このページは会員しか見ることのできないよう,徹底した管理体制が敷かれています。
 専門部会への参加
専門部会は会員専用の集まりで,船舶部会,船員部会,海上交通部会で構成された,海事代理士の取り扱う海事法令の3分野を担当する機関です。
その目的は,
1.海事法令と手続業務について会員の業務をサポートする
2.海事法令の「研究と業務情報の蓄積を体系的に行うこと
となっています。電話で話すほど親しい同業者がいない場合や,公の場で議論することができるなど,大変有益な場です。海事代理士の実務を勉強する上でも重要であると言えます。
MARITIME ACCESS(マリタイムアクセス)への参加
マリタイムアクセスは,端的に言うと「法テラスの海事ヴァージョン」であると言えるでしょう。
法テラスとは“全国どこでも法的トラブルを解決するための情報やサービスを受けられる社会の実現”という理念の下に,国民向けの法的支援を行う中心的な機関として設立されたもので,正式名称は「日本司法支援センター」です。こちらの組織に海事行政・海事法令に関することは特段明記されておらず,海事代理士もいません。

そこで,日本海事代理士会が一般市民と海事関係者を対象に,海・船・港に関する地域情報をはじめ,海事分野における法制度の概要,海事や海技資格手続きについての最新情報など,簡潔な情報提供を行うことを目的として立ち上げた事業です。
正式名称は「海事関係者等のための情報支援システム」です。

互選方法等お問い合わせは下記まで。

マリタイムアクセス本部
社団法人 日本海事代理士会
〒104−0043 東京都中央区湊2−12−6 港SYビル
TEL 03−3552−9688
 海事代理士業界への振興活動
ズバリ,海事代理士資格の実質的な向上へ繋げることに意義があります。これらを達成するにはやはり法律の改正へ繋げる必要があります。
ご存知のとおり,法律の改正となると,詳しい事情は割愛しますが,同じ意思を持った仲間たちとの「結束」が必要です。「海事代理士間の結束」は,日本海事代理士会以外には存在し得ません。

海事代理士会の法制度化,海事代理士会の強制会化,ひいては一番期待されるところが,やはり海事代理士法の不備を埋めることであると思います。

別表の機関にJCI等の業務上重要な機関が入っていないこと,漁業法・漁船法・遊適法・小型船舶登録法・貨物利用運送事業法・倉庫業・海商法(海運契約関係)などの重要法令が入っていないこと。

知っていますか?総トン数20トン未満の船舶の所有権移転登録や検査申請,トン数の測度に関する法律(試験出題科目)に係る手続き,漁業等の各種手続きが,これらの不備によって行政書士の独占業務とされてしまっていることを。先日ようやく,内航海運業法と船員職業安定法に関する手続きが開放されたばかりです。

また,建設機械登記や打刻申請,港付近での倉庫業の手続きなどの海事代理士古来の業務も他士業法に実は触れているのです。

これらの改善を強く求めるべく,全国の海事代理士での結束が非常に重要なのです。


上記のメリットは,一部にすぎません。海事代理士会に入会すると様々な特典があります。

私自信,日本海事代理士会に育てられた身ですし,日本海事代理士会がなければ,今の自分はなかったと思っております。2007発売,改訂版合格マニュアルの合格体験記にも書きましたが,いくら試験で海事法令を頭に叩きこんだとしても,実務で通用するわけではありません。畳の上でいくら泳ぐ練習をしたとしても,実際に海や川で泳げたら苦労はないよということ。そういった意味からも,海事代理士会への入会をお勧めします。


今後,そういった意味からも,また,海事代理士としての業界を知り,かつ,法令実務を勉強していく上においても重要ですので,登録と同時に入会することを強くお勧め致します。



日本海事代理士会への入会案内



入会に必要な書類は以下のとおりです。
  1. 入会申込書
  2. 経歴書
  3. 誓約書
上記入会申請書類一式

上記書類を
本部会長あてに各2部提出して下さい。



★問い合わせ先

(社)日本海事代理士会 本部事務局
http://www.nihon-kaiji.or.jp/
〒104-0043
東京都中央区湊2−12ー6
TEL:03-3552-9688
FAX:03-3555-2957





海事代理士法の確認

海事代理士として業務を行うにあたり,海事代理士法の熟読を必ず行うことが必要であると言えます。
以下,抜粋で解説致します。

※私極的解説もありますので,その点のご理解をお願い致します。


海事代理士法(抜粋)


(業務)
第一条
 海事代理士は,他人の委託により,別表第一に定める行政機関に対し,別表第二に定める法令の規定に基づく申請,届出,登記その他の手続をし,及びこれらの手続に関し書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて,電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。)の作成をすることを業とする。


別表第一 (第一条関係)
  1. 国土交通省の機関
  2. 法務局若しくは地方法務局若しくはこれらの支局又はこれらの出張所
  3. 都道府県の機関
  4. 市町村の機関
別表第二 (第一条関係)
  1. 船舶法
  2. 船舶安全法
  3. 船員法
  4. 船員職業安定法
  5. 船舶職員及び小型船舶操縦者法
  6. 海上運送法
  7. 港湾運送事業法
  8. 内航海運業法
  9. 港則法
  10. 海上交通安全法
  11. 造船法
  12. 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律
  13. 国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律
  14. 領海等における外国船舶の航行に関する法律
  15. 前各号に掲げる法律に基づく命令

※尚,上記海事法令の他,
  1. 船舶のトン数の測度に関する法律
  2. 小型船舶の登録等に関する法律
  3. 建設機械登記令
  4. 建設機械抵当法
  5. 小型船舶造船業法
  6. 倉庫業法
  7. 貨物利用運送事業法
  8. 漁船法
  9. 漁業法
  10. 遊漁船業の適正化に関する法律
などなど,別表第二に規程する法令以外にも,業務に関連する法律があります。これらの法律に係る相談も多々あると思いますので,適切に対応できるよう,常に勉強を怠らないことが大切です。


(登録事項の変更)
第十一条
 海事代理士は,登録を受けた第九条第一項各号に掲げる事項に変更を生じたときは,地方運輸局長に変更の登録を申請しなければならない。
  1. 氏名
  2. 生年月日
  3. 事務所の所在地
  4. 業務に使用する印章 以下省略
(海事代理士でない者の業務の制限)
第十七条
 海事代理士でない者は,他人の委託により,業として第一条に規定する行為を行つてはならない。但し,他の法令(弁護士法等)に別段の定がある場合は,この限りでない。
2  海事代理士でない者は,海事代理士又はこれと紛らわしい名称(例:海事代理人・海事代行人など)を用いてはならない。

(誠実等の義務)
第十八条
 海事代理士は,誠実且つ敏速に,みずからその事務を処理しなければならない。

(秘密を守る義務)
第十九条
 海事代理士は,法律に別段の定がある場合を除く外,その業務上取り扱つた事項について知り得た秘密を他に漏してはならない。海事代理士でなくなつた後も,また同様とする。(いわゆる「守秘義務」規定であります)

(業務に使用する印章)
第二十条
 海事代理士は,その業務を行うにあたつて印章を使用するときは,第九条第一項の規定により登録をうけた印章によらなければならない。
※申請書や請求書・領収書,契約書に押印する印鑑は登録した職印を用いる。

(帳簿)
第二十一条
 海事代理士は,国土交通省令で定める様式の帳簿を備え,左の事項を記載しなければならない。
一  取り扱つた事項の概要
二  委託者の氏名又は名称及び住所
三  委託者から受けた報酬の額
2  前項の帳簿は,当該帳簿に最終の記載をした日から起算して三年間保存しなければならない。

(報酬)
第二十二条
 海事代理士は,その業務の開始前に,委託者から受けようとする報酬の額を定め,これをその事務所において公衆に見やすいように掲示しなければならない。これを変更するときも同様とする。
2  前項の報酬の額は,適正な原価を償い,且つ,適正な利潤を含むものでなければならず,また,特定の者に対し,差別的な取扱をするものであつてはならない。
(受任者の報酬)
民法第六百四十八条

受任者は,特約がなければ,委任者に対して報酬を請求することができない。
2  受任者は,報酬を受けるべき場合には,委任事務を履行した後でなければ,これを請求することができない。ただし,期間によって報酬を定めたときは,第六百二十四条第二項の規定を準用する。
3  委任が受任者の責めに帰することができない事由によって履行の中途で終了したときは,受任者は,既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。

(受任者による費用の前払請求)
民法第六百四十九条
 委任事務を処理するについて費用を要するときは,委任者は,受任者の請求により,その前払をしなければならない。

(受任者による費用等の償還請求等)
民法第六百五十条
 受任者は,委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは,委任者に対し,その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
2  受任者は,委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは,委任者に対し,自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において,その債務が弁済期にないときは,委任者に対し,相当の担保を供させることができる。
3  受任者は,委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは,委任者に対し,その賠償。


第二十四条  海事代理士は,第二十二条第一項の規定により掲示した報酬の額よりも高額又は低額の報酬を受けてはならない。
※業務ごとに掲示することが好ましい。

例:報酬額一覧表

サンプル   海事代理士報酬額表 (円)
船舶登記事件 所有権移転
80,000〜150,000
(根)抵当権抹消
10,000〜15,000
表示変更
8,000〜10,000
船舶運航事業 定期航路
300,000〜800,000
不定期航路
300,000〜800,000
不定期航路(人の運送)
100,000〜200,000
小型船舶免許 更新申請
3,000〜6,000
失効再交付申請
4,000〜8,000
紛失再交付・訂正
2,000〜8,000

特に様式はありませんので,わかりやすく,そして公衆に見やすいように掲示することが望まれる。
尚,業務ごとの報酬だが,「適正な原価を償い,且つ,適正な利潤を含むもの」であれば基本的には各人の判断に委ねられるものである。初めて扱う業務で,どの程度報酬をもらえばよいのかというのは,かかった時間・作った書類の枚数等を考慮して決めるのがよいと思う。
ただ,個人的にはある程度,他の先生の報酬の額も気になるところなので,酒席などがあれば積極的に情報交換をするとよいでしょう。

なぜ「○○円 〜 ○○円」という記載なのかというと,業務の難度や手間にもよりきりだからである。
例えば,わかりやすいところで小型船舶免許の更新申請の場合,有効期限がギリギリになると,その人の分の免許申請1件のために役所へ出頭させられるようなこともしばしばある。正直,通常の金額では割りには合わない。
失効再交付申請の場合も「明日,乗船したいんだけど!」なんてことになると,やっぱり手間がかかる。当然,交通費等の実費もかかるところ。
また,不定期航路事業申請の場合も使用船舶が何隻あるのか,航路は幾つ定めるのか,こちら側でどこまでの調査・資料収集を要するのかなど,様々な条件が起因する。こういった事情から,一概にいくら,と言い切れないのである。



(懲戒)
第二十五条
 海事代理士が,この法律又はこの法律に基く処分に違反したときは,地方運輸局長は,左に掲げる処分をすることができる。
一  戒告
二  一年以内の業務の停止
三  登録のまつ消

(罰則)
第二十七条
 第十七条第一項の規定に違反した者又は第二十五条第一項第二号の処分に違反して業務を行つた者は,六箇月以下の懲役又は二万円以下の罰金に処する。
第二十八条  第十七条第二項の規定に違反した者は,五千円以下の罰金に処する。
第二十九条  第十九条の規定に違反した者は,六箇月以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。
2  前項の罰は,告訴がなければ公訴を提起することができない。
第三十条  第二十六条第一項の規定による報告をせず,又は虚偽の報告をした者は,五千円以下の罰金に処する。


海事代理士法施行規則(抜粋)


(他人に業務を行わせることの禁止)
第十四条
 海事代理士は,他人をしてその業務を処理させてはならない。但し,他の海事代理士に行わせる場合又は単に事務の補助をさせる場合は,この限りでない。
※他の海事代理士に行わせる場合も,複代理人選任の権限が与えられていることが前提でしょう。
(任意代理人による復代理人の選任)
民法第百四条

委任による代理人は,本人の許諾を得たとき,又はやむを得ない事由があるときでなければ,復代理人を選任することができない。

また,ここでいう「単に補助」についてだが,要は事務員さんを雇って,簡単事務処理をさせることである。
所轄官庁こそ違うが,下記の行政書士に対する「補助者」についての先例を参考に転記する。

行政書士補助者について

 (昭和45年6月16日 45総行指発第487号東京都知事注意)

一 (省略)
二 補助者とは,行政書士の監督のもとで,行政書士の命令をうけて単純な事務に従事する者をいう。その要件は次のとおりである。
1 行政書士が特に必要と認めること。
2 行政書士の事務を補助する者であること。
3 (省略)
4 補助者は,行政書士の命をうけ,浄書,計算等の単純な事務に従事する者であること。
 したがって,補助者は,行政書士の命をうけて行政書士の専用となって,単純な事務に従事することが原則であり,それを逸脱する行為は許されないものであること。
三 補助者がもっぱら行政書士の業務を処理する行為は,行政書士法第19条(海事代理士法17条と大よそ同定義)に該当し,同法第21条の罰則の適用があること。
四 行政書士が補助者にもっぱらその業務を行わせ,なんら監督しない行為は,行政書士法施行規則第4条(海事代理士法施行規則第14条と大よそ同定義)に該当し,当該行為に対しては,知事は,行政書士法第14条に規定する処分をすることができる。

補助者の業務領域について

(昭和53年9月14日日行連会長回答)
 補助者は行政書士の業務を補助する者であるから,行政書士に命ぜられた業務を遂行するのみならず諸官公署に出向いて書類の提出代行などなしうる。
 その場合の書類の訂正は明らかな誤記の訂正は出来ると解するが,内容の実質的な変更については許されないと解する。
 補助者の定義については「行政書士の監のもとで行政書士の命令をうけて単純な事務に従事する者をいう」(昭和45年6月16日東京都知事注意)と解する。ただし補助者の濫用などにより弊害が生ずればその行政書士の責任と考えられる。





(表札)
第十五条
 海事代理士がその事務所に掲出する表札には,海事代理士の事務所である旨を記載するものとする。
※海事代理士何某事務所・何某海事代理士事務所。
「何某海事事務所」とするのは,官公署の名称と被るので好ましくない。

※「海事代理士」と「氏名」が入っていれば,他の法令において禁止している場合を除き,ある程度自由に決めてよいものと思われる。但し,細かい点は事前に(社)日本海事代理士会等に確認されたし。
  1. 海事代理士 高松海事法務事務所
  2. 海事代理士 高松海事代願事務所
  3. 海事代理士 高松シーサイド事務所
  4. 海事代理士 高松法務事務所
※但し,前述の通り,海事代理士という名称が入っていても,他の法令で禁止している場合はダメです。
NGな事務所名の一例:
  1. 海事代理士 高松法律事務所
  2. 海事代理士 高松労務事務所
  3. 海事代理士 高松特許事務所
  4. 海事代理士 高松司法事務所
  5. 海事代理士 高松行政事務所

(帳簿)
第十六条
 法第二十一条第一項 の規定による帳簿は,別記第七号様式の通りとする。
2  前項の様式における受託番号は,毎年更新するものとする。
3  同一事項につき委託者が二人以上あるときは,委託者の欄の記入については,そのうちの一人だけの氏名及び住所並びに他の人数を記載すれば足りる。
4  帳簿には,月及び年ごとに当該月間又は年間に処理した事件の総件数及び報酬の総額を記載するものとする。

※帳簿を備えないと,何かあったときに後で大変である。


海事代理士登録後


  1. 個人事業開廃業届等
  2. 報酬の源泉徴収義務
  3. 海事代理士の領収書
  4. 銀行口座の開設
  5. お客さんを獲得するには


個人事業開廃業届等

海事代理士といえども,一個人事業主です。開業をするには下記の申請等が必要です。
  1. 個人事業開廃業届出書
  2. 青色申告の承認申請書
  3. 青色専従者給与に関する届出
  4. 個人事業開始申告書
  5. 所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書
ここでは,上記1,2,4について解説します。その他は各自で確認してください。

◆個人事業開廃業届出書

所得税法第229条により,すべての個人事業主に対して提出が義務付けられているものです。

 ・手数料はかかりません
 ・開業後1カ月以内の申請が必要です
 ・提出先は所轄の税務署

◇青色申告の承認申請書

青色申告の適用を希望する方が行う手続きです(所得税法第144条,同法第166条)。
青色申告による65万円控除はあまりに強いです。
私はこの手続きを行うのに必要な複式簿記を体得するため,日商簿記3級の取得・青色申告会での学習に尽力しました。

 ・手数料はかかりません
 ・提出先は所轄の税務署
 ・提出時期は,
   1.開業日が1月15日より前の場合は3月15日まで
   2.開業日が1月16日以降の場合は開業日から2ヶ月以内


◆個人事業開始申告書

前述した個人事業開廃業届は国税に対するもので,これは地方税に対するものです。
個人事業開始申告書も個人事業を始めたすべてに人に提出義務があります。

個人事業主に対する地方税:
 ・事業税(道府県民税)
 ・住民税(道府県民税・市町村民税)

※海事代理士は事務所を増設できるわけですが,本店だけでなく支店の所在地でも納税する義務があります。

 ・提出先は県税事務所と市町村役場(東京都は都税事務所のみ)
 ・提出時期は自治体により異なりますので各自で確認して下さい。


※上記の税務署等に関する申請はご自身でよく確認してください。
税理士に依頼して処理することも可能です。



源泉徴収義務

海事代理士に支払う報酬には源泉徴収の法的義務があります。
参照:所得税法204条,205条,所得税法施行令322条

(源泉徴収義務)
所得税法第二百四条
 居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金,契約金又は賞金の支払をする者は,その支払の際,その報酬若しくは料金,契約金又は賞金について所得税を徴収し,その徴収の日の属する月の翌月十日までに,これを国に納付しなければならない。
一  省略
二  弁護士(外国法事務弁護士を含む。),司法書士,土地家屋調査士,公認会計士,税理士,社会保険労務士,弁理士,海事代理士,測量士,建築士,不動産鑑定士,技術士その他これらに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金
三  以下省略

 海事代理士の源泉徴収の方法

報酬額から1万円を引き,残りの金額に対して10%を乗じた金額が源泉徴収すべき税額となります。
例えば,報酬額2万円の手続きを受託したとします。
この場合,報酬額である20,000円から源泉税控除の1万円を引き,残りの10,000円に10%をかけます。

(報酬額20,000−源泉税控除10,000)×10%=1,000


実際の請求書には源泉徴収税及び差し引き合計額(実際の請求金額)の記載もしていくことになります。


※海事代理士報酬に対する源泉所得税の徴収漏れは,報酬を支払った会社側が後で不納付加算税等の痛い思いをする可能性もありますし,又はその会社の経理担当の人に突っつかれ,「知らなかった」などということになると,結構恥ずかしい思いをしますので注意が必要です。




海事代理士の領収書

通常,領収書には収入印紙を貼らなければいけないのはご存知のことでしょう。
しかし,例外として営業に関しない受取書は,非課税です(印紙税法第5条,別表第一課税物件表)。

そして,海事代理士の作成する金銭の受取書は,営業に関しない受取書として取り扱われます(印紙税基本通達別表第一)。

「印紙税基本通達」〔昭和53年4月7日間消1−36(抜粋)〕
別表第一 課税物件,課税標準及び税率の取扱い 第一七文書 二六 において,

弁護士,弁理士,公認会計士,計理士,司法書士,行政書士,税理士,中小企業診断士,不動産鑑定士,土地家屋調査士,建築士,設計士,海事代理士,技術士,社会保険労務士等がその業務上作成する受取書は,営業に関しない受取書として取り扱う。


以上から,海事代理士が発行する海事代理士法に掲げる海事代理士業務に関する報酬等の領収書は非課税となりますので,収入印紙を貼る必要はありません。




銀行口座の開設

クライアントに報酬や諸費用等を振り込んでもらう口座ですが,もちろん個人名の口座でもなんら問題はありませんが,やはりそこは事務所名で作りたいところですね。

ところが,最近は銀行も郵便局も預金口座を作ることに対してはとてもうるさいです。
各自確認してもらいたいところですが,私が作ったときのことを参考までに記載しておきます。

法人の場合は,登記簿謄本を持参すればよいのですが,個人事業や権利能力無き社団等の場合は少々厄介です。
まずは,営業を確認できることが必要になりますので,名刺や海事代理士登録通知,前述した税務署等に申請した書類で収受印の押されているもの,個人の身分証明書を持参するとよいでしょう。
私の場合はこの他,ホームページのTOPページを印刷したものと,許認可申請に運輸支局の収受印が押されたものを持参しました。

これらの厄介な壁を越えてようやく「高松海事法務事務所」名義の預金口座を作ることができたのです。




お客さんを獲得するには

さっそく業務を始めるわけですが,前ページで記述したとおり,資格があれば仕事がくるわけではありません。
「知識収集+実践・行動」について日々努力することが絶対に必要なのです。


【資格は飴,お客は蟻】

こうゆう構図は有り得ません。
何にもしなきゃ,当然仕事なんて入りません。
それはどんな業種で起業しても同じことです。

海事代理士は仕事を取りづらいのは確かにあります。営業先でも「うちは○○さんと付き合ってるからいらないよ」というのはザラにあります。それにめげずにとにかく営業活動に没頭すること。これに尽きます。

ではどうやって営業して顧客を獲得すればいいんですか?
こういった質問をよく頂きますが,営業というのは一重には言い切れません。様々な形があるでしょう。
私見ではありますが,「営業」についてしたためた記事がありますので,気になる方は参考にしてみてください。



よく,行政書士・社会保険労務士資格の場合なんかでは,大手の予備校が開業講座を開講していますね。
あれはあくまで,実務に集点を絞ったものが多いと思います。
しかし,実務能力があってもお客が取れなければ宝の持ち腐れです。

尚,海事代理士の開業後の研修会・セミナーとしては,下記があります。

ぜひ,こういった研修会・セミナー等には率先して足をお運びください。

尚,日本マリン倶楽部で当職が【高松塾 〜経営者のマインド〜】と題して,セミナーの講師を何度か開催しております。
過去の実施状況はコチラ。



海事代理士を廃業するには


せっかくの開業も家の事情等により廃業しなければならないこともあるかと思います。その場合に必要な手続きです。

根拠法令:

(業務の廃止等)
海事代理士法第十三条
 海事代理士がその業務を廃止したとき,又は死亡したときは,当該海事代理士又はその相続人は,その主たる事務所の所在地を管轄する地方運輸局長にその旨を届け出なければならない。

(業務廃止等の届出)
海事代理士法施行規則第七条
 法第十三条 の届出は,書面により行うものとする。



廃止届出書の様式は任意で結構ですので,登録された地方運輸局へ届出てください。

手続きの義務者は,廃業される海事代理士ご本人又は,亡くなられた海事代理士の方の相続人となります。



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