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横浜市 の「齊藤義朗」さん,2012年度海事代理士試験合格おめでとうございます。


1.受験の動機

 海事代理士試験の受験に至るまで,3つのステップを踏んできました。下記のどれか1つでも欠けていたら,この士業と出会うことは無かった,と思います。

(1)動機の原点
新渡戸稲造の名言です。その言葉とは「願わくはわれ太平洋の架け橋とならん」です。高校生の頃,恩師から多くの逸話を拝聴しました。その中でも新渡戸氏の物語が印象的であり,今でも私の胸に刻まれています。外国の文化や学問を輸入するだけでなく,日本の文化や伝統を輸出していく。この取引を繰り返すことで,現代日本が形成された,と言っても過言ではありません。新渡戸氏の築かれた架け橋も,現在では太平洋のみならず7つの大海を跨いでいます。そして,その架け橋を行き来する代表的な交通手段は,今も昔も船舶です。船舶こそ,日本の大動脈であると考えました。

(2)士業を志したキッカケ
大学生の頃,『カバチタレ!』[田島隆・作,東風孝広・画,講談社漫画文庫,2006年] に出会ったことです。自身の才覚によって,より良い未来を手繰り寄せることができる。このような隣接法律専門職の真骨頂に魅力を感じました。

(3)海の法律家
高校時代の船舶に対する思い入れと大学時代の隣接法律専門職への憧れを同時に満たすことができる職業を探した結果,海事代理士に辿り着きました。インターネットを用いて「船舶 隣接法律専門職」と検索した際,偶然発見したのです。その後,業務内容について調べてみました。すると,海事限定ですが登記や労務管理等が行えると判明したのです。また,日本における八士業の1つであること。さらに,菊とラット(舵輪)をあしらった14金のピン式徽章があることも分かりました。下調べを一通り終えて,人生を賭けるだけの価値があると確信し,海事代理士試験の受験に踏み切ることを決意しました。


2.受験参考書等

 私は,海事代理士の試験勉強を開始する以前に海事法令を学んだことが一切ありません。大学では法学部に所属していましたが,海事関係とは全く無縁でした。そんな私が本試験を無事突破することができたのは,下記の参考書等のおかげです。

@『海事代理士合格マニュアル《三訂版》』[社団法人日本海事代理士会・編,成山堂書店,2011年]
A“電子政府の総合窓口 イーガブ”[総務省・運営,2012年4月時点の法令データ提供システム]
B“SofTalk”[オープンソース]
C「海事代理士口述試験サポート」[特定非営利活動法人日本マリン倶楽部・主催]
D自作・口述試験一問一答集

紙媒体の六法は使用していません。代わりに,法令データ提供システムを活用しました。何故なら,海事法令を迅速かつ確実に検索でき,重要条文や関連事項を即座に集約できるからです。また,文章を読み上げるフリーウェアのSofTalkを併用することで学習効率が高まりました。


3.受験勉強期間

 本格的に筆記試験の対策を始めたのは,平成24年7月からです。口述試験の対策は,筆記試験終了後,すぐに開始しました。筆記及び口述どちらも1日最低1時間は勉強していたと思います。特に,電車やバスで移動する際のスキマ時間を有効活用しました。


4.筆記試験対策

 何はともあれ海事代理士合格マニュアルを開き,すぐさま受験体験記を読み漁りました。何故なら,成功から学ぶことが合格への最短ルートであると考えたからです。つまり,過去に合格された方々の叡智を拝借させて頂きました。

(1)憲法
 条文からの出題が多い,と分かりました。判例の知識を問われる問題もありましたが,数としては少なかったです。そこで,条文の暗記に全力を投じることを決めました。まず,法令データ提供システムの憲法条文をコピーし,全てWordに貼り付けました。次に,過去問で穴埋めを求められている箇所及び誤答肢の原因となっている箇所をピックアップしました。最後に,ピックアップした箇所をWord上の条文に反映(赤字にする等)しました。すると,過去に出題された条文と未だ出題されていない条文とをセパレートできます。私は,後者の暗記を重点的に行いました。

(2)民法
 条文,判例のみならず学説からも問われることがある,と分かりました。憲法と同様にセパレートしようと考えましたが,条文数が多く多岐にわたるため諦めました。また,範囲が非常に広い割に,たったの10問しか出題されません。これらのことから,ハイリスク・ローリターンであると感じたため,他の科目の勉強に時間を回しました。

(3)商法
 条文知識をストレートに問われる,と分かりました。第3編「海商」は,カタカナ交じりの条文であるため,読解が難しかったです。そこで,カタカナを平仮名に直す作業を始めました。まず,法令データ提供システムの海商条文をコピーし,全てWordに貼り付けました。次に,Word上の条文をカタカナから平仮名へ書き直していきました。最後に,過去問で出題された条文をWord上で何度も読み込みました。

(4)国土交通省設置法
 地方運輸局の名称及び位置(都道府県名)は,ひたすら書いて覚えました。特に,福井県と三重県は間違えやすかったです。北陸信越運輸局か中部運輸局か,中部運輸局か関西運輸局か等々,混同しないように覚えました。その他,法令の名称や所管事務と内部組織の問題も書きながら暗記しました。最終的には,問題文を見た瞬間に手が動き出すほど,身体に染み込ませました。

(5)船員法
 過去に出された問題がそのまま,あるいは一部改変されて再び出題される傾向がある,と分かりました。そこで,海事代理士合格マニュアルに掲載されている過去問を何度も解くことに重きを置きました。それと同時に,出典元である船員法の条文を必ず音読しました。音読するのが難しい時は,SofTalkに読ませました。何故なら,口述試験でも出題される科目ですから,声に出して慣れておくべきだと考えたからです。

(6)船員職業安定法
 数字及び行政用語を確実に暗記することが得点に結びつく科目である,と感じました。過去問では,語群選択と○×形式で出題されています。とはいえ,自分の受ける試験から試験方式が変わる可能性もあります。ですから,過去問を演習する際は,語群を見ず,穴埋め問題を解く要領で学習しました。○×問題では,○か×か,だけでなく理由を必ず書くようにしました。そのほうが記憶の定着に役立つと考えたからです。

(7)船舶職員及び小型船舶操縦者法
 過去に問われたテーマを繰り返し出題する傾向がある,と感じました。そこで,問題ごとに学習するのではなく,テーマごとに勉強することを決めました。用語の定義,講習の種類,再交付手続等のようにテーマ分けし,それぞれに関連する事項を拾い上げていきました。最終的には,ここから出題されるかもしれない,という目星が付けられるほど理解できるようになっていました。

(8)海上運送法
 まず,海事代理士合格マニュアルの過去問を繰り返し解くことで,どのテーマが頻出であるか目星を付けました。その後,法律の目的,用語の定義,サービスの改善及び輸送の安全の確保に関する命令等の頻出テーマを徹底的に覚えました。

(9)港湾運送事業法
 この科目も過去問では,語群選択と○×形式によって出題されています。しかし,自分の受ける試験から試験方式が変更される場合もあるので,船員職業安定法と同様な勉強方法で挑みました。検量や検数等,似て非なる用語が出てきます。私は,分からない言葉が見つかる度,必ずインターネットで調べました。

(10)内航海運業法
 この科目も含めて穴埋め問題の勉強法は,何度も解答を書いて暗記するのがベストであると思いました。内航運送約款,事業の停止,○○計画等々,条文を素読しただけでは,解答するのが困難でした。

(11)港則法
 近年,港則法の適用される港の数と特定港の数を答えさせられる難問が出題されました。さすがに,このような問題ばかり出題されたらお手上げです。しかし,出題されたとしても1~2問程度であることが分かりました。そこで私は,残りの8~9問を確実に解答する,という目標を立てました。

(12)海上交通安全法
 施行規則からも万遍なく出題されている点が特徴的でした。地名,官庁の名称,日時等,頻出箇所が特定しやすかったです。この科目は,ひたすら過去問を解きました。

(13)海上汚染等及び海上災害の防止に関する法律
 行政庁の名称及び管轄を重点的に覚えました。その他,証書,手引書,記録簿等の各種書類についても暗記を試みました。

(14)船舶法
 法令データ提供システムの利点を最大限まで活かして勉強しました。この科目を攻略するには,本法,本法施行細則,船舶登記令,船舶登記細則の4つを理解しなければなりません。そのため紙媒体の六法では,それぞれの関連項目を探すだけでも一苦労です。そこで私は,関連事項の整理に着手しました。まずは,過去問の出典元となった条文を法令データ提供システムからコピーし,Wordに貼り付けました。この際,Word上の条文をカタカナから平仮名に書き直しました。次に,関連条項を前記と同様にWord上で集約しました。そして最後に,過去問で問われた箇所をWord上の条文に反映(赤字にする等)しました。

(15)船舶安全法
 5,10,12,20,24,30等々,確実に覚えなければならない数字があります。そこで私は,Excelを用いて簡単な表を作成しました。それぞれの数字に関する諸事項を一目で確認できるので非常に便利でした。

(16)船舶のトン数の測度に関する法律
 私が海事法令の中で最初に着手した科目です。そもそもトン数とは,どのようなものであるか,という初歩的な知識を身に付けるのに最適でした。また,それほど難しい内容では無かったため,あっさり理解できました。過去問では,主に語群選択として出題されています。しかし,念には念を入れて穴埋め問題を解く要領で学習しました。

(17)造船法
 本法及び施行規則どちらも条文数が少ないので,じっくり素読しました。施行規則第五条(報告)については,Excelを用いて簡単な表を作成しました。

(18)国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律
 過去問を焼き直した問題が繰り返し出題される傾向にある,と感じました。そこで私は,ひたすら過去問を解き続ける勉強法を選択しました。船舶指標対応措置や国際海上運送保安指標等の長い用語は,誤字脱字しないよう特に気を付けて覚えました。


5.口述試験対策

 筆記試験終了後,その日の内に開始しました。何事も情報収集が肝心です。さしあたり合格マニュアルの受験体験記を改めて熟読してみました。そこから見えてきた勉強法は,過去問及び自作問題をノートや単語帳に書き写して,何度も口に出す,というものでした。それを私も真似て,口述試験一問一答集を作成してみました。

(1)船舶法
 ひとまず海事代理士合格マニュアルに記載されている解答例をスラスラと答えられるよう暗記しました。一番苦労したのは,船舶国籍証書の交付を受けるまでの手続についての問題です。様々なバリエーションが想定されるため,合格マニュアルに記載されている過去問だけでなく,思い付く限りの自作問題を作成しました。他には,抹消登録を申請すべき場合と船舶国籍証書を管海官庁に返還しなければならない場合が混同しやすかったので,ハッキリと区別が付けられるように工夫しました。

(2)船舶安全法
 解答例が多岐に渡る問題では,語呂合わせを使いました。例えば,機関,船体,帆装,操舵で「機関戦隊ハンソウダー」等です。他には,日本小型船舶検査機構を「JCI」という略称で覚える等,できるだけ暗記事項を圧縮するよう心がけました。

(3)船員法
 手始めに,筆記試験問題の解き直しを行いました。基本的な問題は,筆記の知識で十分対応できると考えたからです。しっかりと基礎を固めた後,オリジナルの派生問題を作成して知識に幅を持たせました。

(4)船舶職員及び小型船舶操縦者法
 筆記試験で辛酸を舐めたので,本腰を入れて勉強しました。この科目では,海技免状や操縦免許に関する膨大な数の事項を覚えなければなりません。そのため,暗記事項の整理が肝要です。そこで私は,筆記試験対策と同様にテーマ分けし,それぞれに関連する事項をピックアップしました。

それから,インターネットを用いて,更に情報を集めることにしました。とりあえず,大手予備校や専門学校のサイトを検索してみたのですが,役立つ情報は得られませんでした。そこで私が目を付けたのは,海事代理士として開業されている方々のサイトやブログです。早速,横浜第2合同庁舎前の消火栓広告で発見した「シーサイド海事法務事務所」を検索してみました。
その結果,海事代理士 松本 誠さんの私設ブログである“シーサイドでのんびり行こう! 〜海事代理士事務所の知られざる日々〜”に辿り着きました。そして,前記のブログ内に私が探し求めていた情報を見つけました。それは,特定非営利活動法人日本マリン倶楽部が主催する「海事代理士口述試験サポート」についての記事です。記事によると,現役の海事代理士が模擬試験や講釈等を通して,受験生をバックアップしてくださるとのこと。これを渡りに船と考えた私は,参加を決意しました。
開催日は,口述試験の前日でした。口述サポートに参加したことにより,全く答えられない難問に直面した場合の対策と心構えができました。そのおかげで,しっかりと学習した問題に対しては冷静沈着に,初見の問題に対しては物怖じせずに解答できるようになりました。口述サポートに参加して良かったな,と感じた事は数多あります。その中でも1番良かった出来事は,実際に海事代理士業界の最前線で活躍されている先生方とお話できたことです。いろいろと興味深い話を聴けて楽しかったです。


6.最後に

 平成24年12月14日の午前9時ごろにインターネット上の官報で海事代理士試験に合格した旨を確認しました。その後は,関東運輸局の御用納め前に海事代理士登録を済ませるため,必要な書類の収集や職印の用意に取り掛かりました。そして,平成24年12月25日に登録を完了し,今日に至っています。
今後は,社団法人日本海事代理士会に入会し,平成25年1月12日に開催される合格者講習会に参加する予定です。駆け出し新米の身ですから,諸先輩方のご指導の下で研鑽を重ねていきたい,と考えております。まずは,実務経験を積むことに専念し,一人前の海事代理士を目指します。一人前の海事代理士となれた暁には,我が国の海事振興に寄与していきたいです。また,日本海事代理士会の更なる発展にも尽力していく所存です。



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